Evolve Power Amplifiers
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bluelain.gif (954 バイト)

Super Triode Connection Ver.2
超3極管接続Ver.2 6550 シングル ステレオパワーアンプ
MJ無線と実験 1992年1月号 に発表

超3結バージョン2
回路の設計 6550A の規格
出力段の動作点
6CS7 の規格
出力段の入力方式
電流安定化電源
初段増幅回路
回路について アンプ回路
トランジスター規格
電源回路
製作について パーツ配置と外観
配線方法
使用部品一覧
調整について
特性について 諸特性
方形波波形
終りに

matumotojou.jpg (20867 バイト)MJ'91年5月号に次ぐ2回目の超3極管接続(以下、超3結)パワーア ンプの発表となります。前回と同様のシングル動作ステレオ構成、トラン ジスターで築いた石垣と、シンボリ ックに輝く真空管の天守閣、城主は音の中だけに見える幻影の3極管という回路です。出力管に大出力の6550A、出力ト ランスにコアボリュームのあるXE- 60-2.5Sを投入して一気にグレードアップを図りました。

正面
上面
側面
背面
内部
アンプ部分
電源部分

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超3結バージョン2

前回との大きな違いは、超3結の方式をより内部抵抗の低い第2の超 3結(バージョン2)に変えた点です。

[図1]超3極管接続バージョン1

zu1.gif (8840 バイト)

 

[図2]超3極管接続バージョン2

zu2.gif (12811 バイト)

前回発表のバージョン1は図1に示す通り、ドライブ管V1のカソー ドを出力管V2のグリッドヘダイレクトに接続して、プレート電圧の変化分epをそのままV2のグリヅドヘ伝える方式であるため、この回路の等価内部抵抗rpはV2gm分の1以下にはなり得ません。
図2に示すバージョン2では、V1のカソード電圧をTrのエミッターで固定することにより、epはV1の内部抵抗rp1に応じたV1のカソー ド電流 ikに変換されます。
Trのコ レクター電流はikに等しく、V2のグリッド抵抗Rgikの積がV2の入力電圧ec1として与えられるため、図2の計算式の通りrp1に対してRg を高くすることで、バージョン1の場合よりも rpを低くすることが可能となります。

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回路の設計

出力段の動作点

[表1] GE 6550A の規格

ヒーター規格 最大規格 静電容量 電極接続

6550pin.gif (3484 バイト)

Vf If Eb Ec2 Pp Pg2 IK Ec1 Rg Cpg Cin Cout
(V) (A) (V) (V) (W) (W) (mA) (V) (kΩ) (pF) (pF) (pF)
6.3 1.6 660 440 42 6 190 -300 50 0.8 15 10

A1級シングル動作例

Eb

Ec2

Ec1

RL

Ib

Ib sig.

Ic2

Ic2 sig.

gm

rp

Po

KF

(V)

(V)

(V)

(kΩ)

(mA)

(mA)

(mA)

(mA)

(S)

(kΩ)

(W)

(%)

400 225 -16.5 3 87 105 4 18 9 27 20 13.5
250 250 -14 1.5 140 150 12 28 11 12 12.5 7

6550AのA級シングル動作は表1の動作例によると最大出力20Wですが、本機は回路を簡素化するため、プレート電圧Eb と第2グリッド電 圧Ec2 を等しく300Vとしました。

[図3] 6550AEp -Ip 特性

zu3.gif (33776 バイト)

図3に示すようにEb =300V、Ib =120mAを動作点としてRL=2.5 kΩのロードラインを引くと最大出力15Wとなります。
ドライブ管はプレート電圧が出力管と同じに掛かるため、プレート電圧の最大規格がそれをクリアできる球として6CS7第2ユニットを採用しました(表2)。

[表2] GE 6CS7 の規格

ヒーター規格

最大規格

静電容量

Vf

If

    

Eb

epm

Pp

IK

Rg

Cpg

Cin

Cout

(V)

(A)

    

(V)

(kV)

(W)

(mA)

(MΩ)

(pF)

(pF)

(pF)

6.3

0.6

ユニット1

500

-

1.25

20

2.2

2.6

1.8

0.5

ユニット2

500

2.2

6.5

30

2.2

2.6

3

0.5

電極接続

6CS7pin.gif (4006 バイト)

動作例

   

Eb

Ec

Ib

gm

rp

μ

    

(V)

(V)

(mA)

(mS)

(kΩ)

ユニット1

250

-8.5

10.5

2.2

7.7

17

ユニット2

250

-10.5

19

4.5

3.45

15.5

6CS7はTVの垂 直偏向回路用複合3極管で、第1ユニットが12AU7、第2ユニットが12BH7Aのそれぞれの片ユニットと近似の特性を持ち、良好な直線性を確保するため高いブースト電圧を掛られるようにプレ ート電圧の最大規格が500Vとなっています。

[図3] 6CS7第2ユニット Ep -Ip 特性

zu4.gif (25301 バイト)

6CS7第2ユニットのプレート損失は6.5Wと大きいので、この動作電流を20mA程度にすることも可能ですが、そうすると出力ト ランスのDC重畳電流が増すことと、プレート飽和電圧が高くなり最大出力が減少するため、図4のように Ip =5mAを動作点としました。

出力段の入力方式

信号電圧の与え方は、図5のよう にTrのべ一スをアースしてV1の グリッドヘ入力する方法と、逆に図 6のようにV1のグリッドをアース してTrのべ一スヘ入力する方法があります。
V1へ入力する場合、ミラー効果 のため、グリッド側インピーダンス が高いと周波数特性の高域が低下す る欠点があります。

[図5] グリッド入力式 [図6] ベース入力式
zu5.gif (9792 バイト) zu6.gif (6933 バイト)

 しかしTr側へ入力する場合に、図7のように前段と 出力段に複合管を使用すると、第2ユニットのプレートから第1ユニ ットのプレートヘ信号が飛び付いて発振します。

[図7] ベース入力式で V1が複合管の場合

zu7.gif (10502 バイト)

 本機はV1へ入力する方法を取り ました。 その理由は歪みの打ち消しが初段と偶然にマッチして、極 めて低歪みにできたからです。
高域 特性を改善するため図8のようにエミッターフォ ロワー回路を追加し、V1のグリッド側インピーダンスを低くしました。

[図8] 出力段の定数

zu8.gif (13250 バイト)

V1のバイアス電圧は図4の動作点においてEc =-19Vと求められ ますが、球の個体差に合わせて可変可能にしておきます。

 Rgを∞とすれば理論上、内部抵抗=0となりますが、現実には定電流源の内部抵抗が有限であり、浮遊容量がRgと並列に入るため0とはなりません。 それでも極めて低くな ることは確かです。
しかし内部抵抗が周波数によって大きく変化したり、激しく過剰な動作をするのは好ましくなく、Rgを減らして適度な値にすることで内部抵抗は増加するものの、音質は向上すると考えました。
 本機はRgを47kΩとしました。ちなみに図3、図4の動作点において、およそrp1 =8.5kΩ、gm =8mS であるためrp =22.6Ωとなります。

電流安定化電源

 超3結回路は内部抵抗の低いシャ ントレギュレーターそのものですから、通常のアンプのように内部抵抗の低い電源を接続すると、電源電圧と超3結回路の動作電圧のわずかな差で動作電流が大きく変動し、不安定極まりない状態となります。
そこで電源電圧に対応して超3結回路の側を制御する方法もありますが、信号系の回路を複雑化したくなかったため、電源回路の側を工夫しました。
 電源回路の動作原理は図9に示すように、超3結回路と一対の定電流源で直流電流を供給し、交流の信号電流はバイパスコンデンサーを通過 させます。

[図9] 電源回路 

zu9.gif (11468 バイト)

 電源電圧Ebbは超3結回路で定ま り、電源電流Ibbは定電流源で定まるため、Ebbが変化してもIbbは変化せず、またその逆も起こらず、高い安定性が得られます。
ただし、この方式はIbbが一定なA級動作でしか使えません。
また、出力管の第2グリッド電流は大出力時に増加するため、第2グリッド電源を別個に備える必要があります。
なお、表1の動作例ではプ レート電流も最大信号時に増加してますが、これは歪みが大きいためで、無歪みではプレート電流は一定です。

バイパスコンデンサーは低い周波数の信号電流を通すために大容量が必要となります。
そこで図10のよう にTrで等価的な大容量コンデンサーを作ることとしましたが、hfeの非直線性のためIbの増加と減少で差が生じIbbが変動するため、図11 のようにCBと並列に抵抗RBを入れ、電流の変化量を減らしました。

[図10]  等価コンデンサー

zu10.gif (4583 バイト)

[図11]  RB追加等価コンデンサー

zu11.gif (5274 バイト)

 RBにはEbbが増加した場合Ibb を減少させる効果があり、出力管の プレート損失を一定に保つ作用をします。
なおTrの等価コンデンサー 回路はコレクター電流に信号電流が重畳するため、図9のように信号電流をクローズドルーブに閉じ込めることはできません。

初段増幅回路

 6CS7第1ユニットの1段増幅で出力段をドライブするつもりでしたが、出力段の最大入力電圧は図4から約40VP-Pと推定されるため、ラインレベルの信号を20倍ほど増幅 しなければなりません。ところが 6CS7第1ユニットのμが低いため ゲインが足らず困ってしまいました。
種々実験した中で、6CS7第1ユ ニットと2SK30によるカスコード回路がゲインが高く、特に歪率を極めて小さくできたことから採用しました。

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回路について

アンプ回路

 図12にアンプ部および電流安定化電源の片チャンネル分の回路図を示します。

[図12] アンプ部および電流安定化電源回路図(片チャンネル分)

zu12.gif (46276 バイト)

 V1aとQ1による初段のカスコー ド回路は、V1aのカソードがノイズ を引き込みやすく注意を要します。
初段と出力段の歪みを打ち消し合う ようにQ1のソース抵抗Rsを調整 しますが、V1aのプレート抵抗47kΩ、 次段入力抵抗33kΩ、V1bの動作電流、Rg 47kΩは回路の直線性と関係するため、大きく異なる値にすると 残留歪み分が多くなります。
 Q12SK30IDSSが小さいとRs の調整範囲に入らなくなるため、Q1 用にIDSSが4mA以上の物を選別 し、残りはQ8,Q11に使用します。
Rsで初段のゲインが変化しますから、本機はIDSS 4.5mAの中からRsが160Ωになるものを選別して両チャンネルのゲ インを揃えました。
 初段と次段のカップリングコンデ ンサー0.1μFはヒアリングして決 めた値です。周波数特性上では低減が下降してますが、カップリングコンデ ンサーの容量を大きくして低減を平坦に近づけると私のシステムでは聴感上、低域が膨らみすぎてバランスが取れませんで した。
Q2はエミッターフォロワー回路 で、Q4はQ2のエミッター負荷となる定電流回路です。

 V1b,Q3,V2で出力段の超3結回路を構成します。
Q3のコレクターにつながれたQ5の定電流回路の電流がV1bの動作点となります。
なお Q4,Q5のバイアスにはLEDを用いました。LEDは発光色で電圧が異なるためLED1は赤色を指定します。
Q4,Q5の電流はそれぞれのエ ミッター抵抗の値で定め、Q4を6 mA,Q5を5mAとしています。
定電流ダイオードE152はLED1へ電流を供給するかたわら、Q2のバイアス電圧を作り、この電圧は VR1で可変できます。
 出力トランスのタンゴXE-60-2.5Sは、端子の表示通り接続すると1次側と2次側で位相が反転します。 本機は配線の都合でP端子を電源にB端子をプレートヘ接続しているため、入力と出力が同相です。Q6〜Q10による電流安定化電源回路は、Q8の定電流回路の電流をVR2で可変して、Q9によるV1b,V2のプレート電源B1の電流Ibbの調整を行います。
 電源ONからEbbが超3結回路の動作電圧(300V)に達するまで約30秒かかるようにRBを設定して、 ヒーターウォームアップとタイミングを合わせました。
RBが低い場合、 ヒーターウォームアップ以前にEbbが超3結回路の動作電圧よりも高くなるため、ウォームアップして動作電圧に下がる間に大電流が流れ、出力管を傷めます。
 Q10は初段とV2の第2グリッド電源B2のためのMOS−FETで、 Q10のゲートをQ9のべ一スと接続 し、B2の電圧Ec2Ebbに従うよ うになっています。
 Q6はQ9,Q10に電圧供給する MOS-FETです。
Q7でQ6のソース電圧を、Q9のべース電圧に対しツェナーダイオードHZ9Lの電圧(9V)だけ高くしているため、Q8,Q9,Q10 に低耐圧の素子が使用できます。
 Q6は耐圧600V以上、最大損失 80W以上の物を放熱板に取り付けて使用します。
整流後の電圧が高すぎるとQ6の発熱量が多くなるので、電源トランスのタップを調整して400Vくらいにします。
Q7,Q9,Q10は中出力の物でよく,発熱が少ないので放熱板は不要です。
なおQ7の耐圧は400V以上必要で、Q9は発振対策上ftが10MHz以下でなければな りません。
使用しているトランジスター類の規格は表3を参照下 さい。

[表3] トランジスター規格

形名 最大定格 電気的特性 接続

VCBO

IC

PC

hfe

ft

Cob

(V)

(mA)

(mW)

(MHz)

(pF)

2SB716A

-140

-50

750

250〜500

150

1.8

sinboruTO92A.gif (679 バイト)

2SD756A

140

50

750

250〜500

350

1.6

2CC1815

50

150

400

70〜700

>80

2

2SD401

150

2A

20W

90

5

-

sinboruTO220A.gif (1161 バイト)

2SD718

120

8A

80W

55〜160

12

170

  

VGDS

ID

PD

IDSS

gm

Cis

   

(V)

(mA)

(mW)

(mA)

(mS)

(pF)

sinboru2SK30.gif (663 バイト)

2SK30ATM

-50 10 100 0.3〜6.5

>1.5

8.2
   

VDSS

ID

PD

VGS

gm

Cis

   

(V)

(A)

(W)

(mA)

(S)

(pF)

sinboruMOSfet.gif (1134 バイト)

2SJ117

-400

-2

40

-2〜-5

>0.4

520

2SK310

400

3

40

1〜5

>0.6

440

2SK719

900

5

120

1〜5

>1

950

電源回路

[図13]電源回路

zu13.gif (27879 バイト)

電源は図13に示すように、電源トランスにタンゴMS330Dを使用しています。
B電源が倍電圧整流方 式のため、ホット側のブロックコンデンサーのケースにはリップル電圧が乗っているので、ノイズの飛び付きを防ぐためできるだけアンプ回路から遠ざけます。

 B電源の整流ダイオードに流れる 電流は、リップルノイズとなって電源トランスの中でヒーター巻線に誘導しており、これをヒーター電源とすると、V1aのカソードにノイズが侵入しハムを発生します。
そのためにヒ ーター電源はトランスを別にするか、フィルターを通して浄化する必要があります。
本機は6CS7のヒーターを直流点火し、その定電圧回路にノイ ズフィルターの機能をさせてます。
整流ダイオードとQ13は放熱を要し、整流ダイオードの直列抵抗1Ω10W はQ13の発熱量を減らすために入れ てあります。

 C電源は負荷となる回路がすべて定電流性で電圧変動に影響されないため、CRでリップルを抑えるだけの回路としました。

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製作について

パーツ配置と外観

外観に機能的必然性と造形的主張を持たせると、美しく存在感のある作品となります。
市販部品を使う自作アンプでは部品配置が個性の決め手です。
初めの案はシャシーを縦長に使う シンメトリーな配置でした。形はきれいですが配線に無理が出るため、 図14に示すように、真空管周りの配線を両チャンネル同じにし、B電源回路は1箇所にまとめ、信号系の配線が電源部を横切ったり入力と出力の配線が接近しないように考えて、 シャシーを横長に使うことにしました。500kz.jpg (20207 バイト)
 真空管のガラスの透明な質感と、背後のトランスの巨大なマスが生み出すフォルムは、ミッドシップレーシングカーやジェット戦闘機、あるいはもっと未来的な乗り物のイメージを湧かせます。

[図14] 部品配置zu14.gif (14600 バイト)


 ところが、球が隣接しているために Lchの6550AのプレートからRch の6CS7のプレートヘ信号が飛び付 き、Rchのクロストークが悪化してしまいました。対策として球の間をシールド板の衝立で仕切りました。この方が6CS7を シールドケースに入れるより効果がありました。本来はLcHとRchの球を隔離して配置すべきと反省してます。

 シャシーはA4サイズのケンオー ディオBA-300ブラック仕様です。
このシャシーは6枚のコの字に曲げ加工したパネルで組み立てられてお り、シャシーの際まで部品を取り付けるにはパネルの曲げ代まで穴あけ しなければなりませんでした。
また出力ト ランスの下の銘板がパネルの曲げ代に重なるため、1枚の銘板を2分割して2個のトランスに半分ずつ取り付けています。
通気のため6550Aのソケット周りと放熱板の下に穴をあけ、シャシーの底板を使わずに、ゴム足はサイドバネルに取り付けましたが、足のはみ出しが不格好なため、車のオーバーフェンダー風に斜に切った丸棒を貼り付けてあります。
シャシー内部は出力トランスを境にアンプ部と電源部が分かれていて、Tr 回路は基板に載せてあります。
ヒー ター直流点火回路のブリッジダイオ ードとQ13はアルミアングルを介してシャシーに放熱しました。

配線方法

 配線は、電源、アースともにLRチャンネルに分けて行い、アースの配線は電流安定化電源回路の基板の1点に集めて、そこからシャシーへ落としてます。
整流回路と電流安定化電源回路のブロックコンデンサーのアースは、 図15のように別々にアース点へ配線しなければなりません。も しこれを図16のように行うと、共通イン ピーダンスを生じて異常動作の原因となります。

[図15]ブロックコンデンサーの配線 [図16] 共通イン ピーダンスを生じる配線
zu15.gif (10909 バイト) zu16.gif (10208 バイト)

また本機に限った現象か も知れませんが、入力ピンジャック の所でLchとRchのアースをつな ぎ合わせないとAC電源に同期したノイズが発生しました。
 電流安定化電源回路の基板がQ6の放熱板の真下に位置しているため、 Q6への配線が基板の配線と干渉すると、ハムが出たり発振するために注意が必要です。
 使用部品を表4に示します。本機1台分に掛る部品代は10〜15万円ですが、トランス以外は予備を一緒に購入しておくべきでしょう。

[表4] 使用部品一覧

品名

数量

品名

数量

真空管

GE 6550A

2

FET

2SK30ATM(GR)

5

RCA 6CS7

2

MOS-FET

2SJ117

2

トランジスター

2SB716A(E)

2

2SK310

2

2SC1815(GR)

1

2SK719

2

2SD401

2

ダイオード

1S1588

2

2SD718

1

1S2711

2

2SD756A(E)

6

4D4B44

1

出力トランス

タンゴ XE-60-2.5S

2

10DF2

4

電源トランス

タンゴ MS-330D

1

ツェナーダイオード

HZ-7L

1

フィルムコンデンサー

ERO 630V 0.47μF

4

HZ-9L

2

ERO 630V 0.1μF

2

定電流ダイオード

E152

2

ERO 630V 0.01μF

4

LED

3φ赤色

2

MKH 100V 0.1μF

4

酸化金属皮膜抵抗

2W 150kΩ

2

電解コンデンサー

500V 100μF×2

1

2W 47kΩ

4

350V 220μF×2

2

1W 510Ω

1

100V 220μF

2

1W 100Ω

1

35V 3300μF

1

炭素皮膜抵抗

1/4W 47kΩ

4

シャーシ

ケンオーディオ BA-300黒

1

1/4W 33kΩ

2

真空管ソケット

USタイト

2

1/4W 10kΩ

2

MT9Pタイト

2

1/4W 240Ω

2

放熱器

30×120×100

1

1/4W 200Ω

2

電源スイッチ

LED付シーソータイプ

1

1/4W 160Ω

2

ヒューズホルダー

ミニタイプ

1

1/4W 100Ω

4

ガラス管入りヒューズ

ミニタイプ 3A

1

セメント抵抗

10W 1Ω

1

入力端子

RCA 2P黒ベース

1

半固定抵抗器

サーメット 10kΩ

2

出力端子

20A 8P端子台

1

サーメット 500Ω

2

立型ラグ端子

1L2Pベークライト

5

配線材

LC-OFC AWG18 2m

6

1L4Pベークライト

1

ACコード

15Aプラグ付 2m

1

ガラスエポキシ基板

サンハヤト 1CB-97

1

ネジ類

M3,M4

適宜

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調整について

 電源回路、電流安定化電源回路、 アンプ回路と配線を進め、回路ごと 配線の終了する都度、動作を確認す ることが大切です。また本機はVR1 とVR2の調整なしに動作させることはできません。

 まず電流安定化電源回路の配線が終了した時点でVR2の仮調整を行います。
B1とアース間に2.5kΩ〜3kΩ 50W位の抵抗と電圧計を接続し、VR2を回す用意をして、電圧計を見ながら電源スイッチを入れます。
電圧が徐々に上昇するか確認し、VR2でB1の電圧Ebbを300Vに調整します。
 なおこの回路の出力をショートさ せることは無論、コンデンサー類をタッチしても過電流で素子が破壊しますから、測定器の着脱は電源スイッチを切った状態で行うべきです。
テスターを使用する場合は、間違えて電流や抵抗のレン ジにしないよう注意が要ります。
過電流で素子が破壊すると、その周囲の素子に高電圧が掛かり、連鎖的に回路中のほとんどの素子が破壊してしまうため修復が大変になります。

 アンプ回路の配線が終了したら、球を差す前に一度通電してVlbのグ リッド電圧をVR1で最大にしてお き、次にIbbとEbbを設定するための調整に入ります。

Ibbは出力トランスの1次巻線抵抗(RT)の電圧降下(ET)を測定して逆算します。
XE-60-2.5SはRT =66Ωですから、Ib=120mAとす るには、V1bの重量電流5mAを考慮して ET=(120+5)×66=8.25(V) とします。
 調整は片チャンネルの球だけを差してチャンネルごとに行います。
ETを測定するた めに出力トランスのP-B端子間に指針式(デジタル式では変化が読めず勘が働かない)の電圧計を接続し、 Ebbを見るための電圧計をもう1台 B1とアース間に接続します。
この際、無信号状態でないと正確に測定できませんから、入力をショートしておきます。
 以上の準備の後VR1を回す用意 をして電源スイッチを入れます。
Ebbが上昇しV1bに電流が流れ始め るとLED1が点燈します。Ebbが 300V位に達したら、VR1でETを 8.25Vに調整します。
この時、VR1 を速く大きく動かすと、一時的に過剰に電流が流れたり、逆にカットオフしてしまうので、VR1は小刻みに ゆっくり動がさなければなりません。
 VR1の調整でIbbとEbbが同時に変化するため、Ebbが300VでETが8.25V以下の場合はVR2でETを増し、ETが8.25VでEbbが高い場合はVR2でETを減らして、再度VR1でEbbを300Vとします。
厳密なEbbはETを加えた308Vとなりますが、ETとも5%位の誤差はかまいません。

調整後は球を入れ違えないように球とソケットに合わせマークを入れておきます。
球を交換する場合は前述の調整を再度しなければなりません。

 Rsの調整には歪率計が要るため 暫定的にV1aのプレート電圧を150 〜200Vの間に納まるようRsを調整 しておけば動作上問題なく音出しで きます。
 正常であればスピーカーから何のノイズも出ませんが、ハム等がある なら、カップリングコンデンサーを外してみて、原因が初段以前かその後なのか確かめ、配線の仕方でノイ ズ源と共通インピーダンスを生じて ないか、ノイズ源に部品や配線が接近してないか調べます。
また初段後に原因がある場合は発振も考えられ るので、バイパスコンデンサーの接続点、電流安定化電源回路の配線の引き回し、同回路のTr等が不良で ないか疑ってみます。
これらの原因究明はオシロスコー プによる波形観測が早道です。

Rsの調整は歪み波形を見ながら 行うと2次歪みの打ち消し状況がよ く分かります。
出力波形を上下同時 クリッブするようにVR1,VR2を再調整した結果、最終的にIb=115mAとなりました。

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特性について

本機の諸特性を図17〜図20に示します。

[図17] 出力対歪率特性 [図18] 入出力特性 (1kHz)
zu17.gif (9826 バイト)

zu18.gif (7183 バイト)

[図19] 周波数特性,クロストーク特性 [図20] ダンピングファクター特性
zu19.gif (16783 バイト) zu20.gif (9217 バイト)

方形波波形を写真(a) 〜(c)に、クリップ波形を写真(d)に、低域大出力時の波形の崩れを写真(e)に、 そして残留歪み波形を写真(f)に示します。
尚、写真(a) 〜(c)の上の波形は入力波形で下の波形が出力波形です。また写真(f)の大きい正弦波は出力波形で歪み率計の入力であり、小さい波形は歪み率計の出力で歪み成分を拡大した波形です。

出力波形写真
(a)100Hz方形波 (b)1kHz方形波 (c)10kHz方形波
a.gif (5412 バイト) b.gif (5087 バイト) c.gif (4888 バイト)
(d)クリップ波形
400Hz 13W
(e)低域の崩れ
20Hz 25Vp-p
(f)1kHz歪波形
1W 0.009%
d.gif (5967 バイト) e.gif (5631 バイト) f.gif (4864 バイト)

残留ノイズはLchで90μV,Rch が80μVと少なく、しかもクロストークは残留ノイズレベルに達してい ます。
歪み打ち消しの調整を1kHz 1Wで行ったためその部分で特に低歪みとなっていますが、1W以下では100Hzの方が1kHzより低歪みとなりました。
入力感度は0.3Vでフルバワーに達し、出力のクリッピングポイントは12.5Wでした。
ダンピングファクターは1kHzで14と超3結の威力を物語ります。
低音域の太さは超3結の特徴らし く、本機は特に強烈です。
さらに中音域の滑らかさ、高音域の繊細さもあり、全体の質は高いのですが、ナ チュラルな音とは違い、3極管アン プ特有の湿もりや柔らかさが強調さ れたという印象です。

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終りに

超3結アンプは低い内部抵抗で出 力トランスを強力にドライブするた め、f特、歪率、D,Fにすぐれ、シ ンプルな回路でも高い性能が得られ ます。したがって半導体を使わない 純管球式の超3結アンブにもいつか挑戦してみたいと思いますが、本機の意図は超3結のデモンストレーシ ョンではなく、真空管アンプにおい て私のテーマとする「オーバーオー ルのNFBを廃し、NFBアンプを凌駕する性能を得る」ための一手段に他なりません。
本機はアンプとしてまとめ上げることを急ぎすぎて、偶然やその場しのぎに任せた部分のあることが心残りです。

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Copyright © 1997 Shinichi Kamijo. All rights reserved.
最終更新日: 2000/04/23 11:33:22 +0900


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