Evolve Power Amplifiers
Contents   Data sheets  Notes       Links       

Super Triode Connection Ver.1type
超3極管接続Ver.1 6BM8 シングル ステレオパワーアンプ U

真空管アンプ独特の温もりのある音でパソコンのスピーカーを鳴らしてみたら楽しいと思いませんか。
パソコンが起動するまでに真空管のヒーターは暖まり、柔らかな音で迎えてくれます。

パソコンに限らずヘッドフォンステレオやラジカセ、CDプレーヤーをつなぐことができます。
16cm以上の能率の高いスピーカーでは更に良い音が楽しめます。

UP.jpg (30394 バイト) [上面の写真]

ケースにタカチUC20-5-14D(W200×H50×D140)を使用しましたが板厚が2mmあるので加工には少し苦労します.
ほぼ同じ大きさのリードP-1(W200×H60×D130)ならば板厚が1mmなので加工し易いと思います.
ボリュームを省いて出力トランスに占有床面積の小さいタンゴM-705を使えば更に小型なリードS-8(W180×H50×D120)に載せることも可能です。

FL.jpg (29254 バイト) [正面左の写真]

フロントパネルの文字はOHPフィルムにインクジェットプリンタで印刷して重ね合わせたものです.
シャンペンゴールドのボリュームツマミは三栄無線製です.

BK.jpg (30262 バイト) [背面の写真]

電源トランスと入力ピンジャックから出力端子をできるだけ離すため、出力のアース端子を外側に配置しました。

U-608.jpg (29840 バイト) [出力トランスのクローズアップ写真]

1次側の端子には感電防止のためプラスチック板で作ったカバーを取りつけました.

内部.jpg (35911 バイト)

[内部の写真]

ブロックコンデンサーは基板取り付けタイプのためユニバーサル基板に取り付けましたが,トランジスターはラグ板に空中配線してあります.
左端の透明ケースはヒューズホルダーです.

配線クローズアップ.jpg (35754 バイト) [アンプ部分のクローズアップ写真]

5W2kΩセメント抵抗はボリュームの下に隠れて見えませんが,ケースに押しつけ放熱してあります.


top 本機の回路  pdficonarrow.gif (1016 バイト) PDFファイル78KB

アンプ回路(片チャンネル分)


電源回路(両チャンネル分)

6bm8z電源.gif (7176 バイト)


top 回路の特徴

通常はプレート側に入るB電源のリップルを低減する平滑回路を本機ではカソード側に入れてあります.カソード抵抗(5W 2kΩ)とカソードから+Bへつながるコンデンサー(400V 250μF)がその平滑回路です.これによって出力管(6BM8 5極部)のプレート−カソード間とスクリーングリッド−カソード間にはリップルノイズの少ない電圧が供給されます.
カソード抵抗による電圧降下(70V)は出力管のコントロールグリッドのバイアス電圧と初段トランジスター回路の動作電圧として利用しています.
平滑回路を各チャンネルごとに配していることで,B電源を介したクロストークが抑えられチャンネルセパレーションが向上するというメリットもあります.
また電源トランス(タンゴ N-12)のAC220Vをシリコンダイオードでコンデンサーインプット方式によって整流した直後の電圧は300V近くもあり6BM8シングル出力回路のB電源電圧としては高すぎますが,カソード抵抗に電圧を食わせることで200V程度の適当な電圧に下げることができました.

本機のカソード抵抗は平滑回路の一部であるためカソード抵抗の両端にリップル電圧が発生しますが,これは回路の動作に支障しません.
なぜなら,カソード抵抗のリップル電圧は出力管のカソードとアースの間に加えられますが,アースから出力管のコントロールグリッドに至るまでの経路には初段トランジスター(2SA1775A)が入っていて,初段トランジスターは電流帰還抵抗(1/4W 1kΩ)の作用でコレクターインピーダンスが極めて高い状態となっているために,コレクター−エミッター間電圧がカソード抵抗のリップル電圧で変化してもコレクター電流は何の変化もしないので,出力管のコントロールグリッド−カソード間電圧はカソード抵抗のリップル電圧に影響されることは無いのです.

定電流ダイオードによる固定バイアス方式を採用しているため,自己バイアス方式にあるような出力の変化で起こるバイアス電圧のふらつきは有りません.

電源電圧の変動はカソード抵抗に発生して,出力管の動作点の電流が変動します.カソード抵抗は2kΩですから,B電圧が1V変動しても動作点の電流の変動は0.5mAです.カソード抵抗を大きくするほど動作点の電流の変動は減りますから,カソード抵抗を定電流回路に置き換えると理想的です.
ここをクリックすると理想的回路へジャンプします.


top 素子のピンコネクション

PIN.gif (19636 バイト)


top 実体接続図  pdficonarrow.gif (1016 バイト) PDFファイル261KB


top 使用部品について

電圧増幅用の3極部と電力増幅用の5極部が1つのチューブに入った複合管で、1本で超3極管接続ができるため便利です。
5極部の最大プレート損失が7Wですから大きな出力は望めませんが、コンパクトなアンプには好適です。

粗悪品に当たらないためには、プッシュプルアンプを組む予定がなくても、ペア組品を求めた方が特性チェックされているので安心できます。

シングル用の出力トランスでは最も小型なタイプです。
捲線のタップの位置でインピーダンスを選択できるので、様々な真空管に適合できます。
凡例に捕らわれず自分自身で音を聴いて、好みのタップ位置を見つけてください。

本機は1次側5kΩ、2次側4Ωの端子を使用して、8Ωのスピーカーを接続した場合の1次側インピーダンスが10kΩとなるようにしています。
8Ω端子よりも4Ω端子の方が捲線の直流抵抗が低いので、ダンピングファクターが増して低音の締まりがよくなります。
もっとコアボリュームのある大型の出力トランスならば、さぞかし音が良くなるだろうと思い試して見ましたが、意外にも期待外れの結果で、こもったように躍動感のない無表情な音になりました。
6BM8とU-608の組み合わせは、思わず顔がほころんでしまう嬉しい音がします。

タンゴのカタログに載っている電源トランスの中で、B電源用の電圧が本機に適当な220Vを取れることから選択しました。
磁気シールドがないので取りつけ方向など、基本をおろそかにしないことが肝心です。

ブロック型の電解コンデンサーで耐圧は最低300V必要です。容量は100μFでもかまいませんが200μF以上を推奨します。
本機ではメーカー放出品で安売りされていた形状の小さい基板取り付けタイプを使用しています。

基板取り付けタイプは端子で本体を基板に固定できるように、本来の端子の他にダミー端子が付いている製品があります。
ダミー端子は内部で電極とは接続されていませんが、単なる空き端子ではなく電解液に浸っているために電圧が生じるので、何も接続しないでください。

言うまでもないかもしれませんが電解コンデンサーには極性があり、逆接続では大電流が流れます。そのため発熱して電解液が分解しガスが発生し、最悪は破裂します。破裂しないまでも外見的には頭部が膨らんだり、防爆弁から電解液が染み出すことがあり、特性的には容量が減少する等の劣化が起こります。従って、配線する時には極性を十分に確認し、最初に通電する時に、極性と同じ向きの電圧が掛かるかを、先ず確認することが必要です。

耐圧は10V以上あれば良く、容量は0.1μFから1μFの範囲内としてください。
本機では ERO1860(100V)ポリカーボネートフィルムコンデンサー を使用しています。

定格電力は5W以上で抵抗値は2kΩに限ります。発熱するのでセメント抵抗またはメタルクラッド抵抗をケースに接するように取りつけて放熱してください。無誘導巻きを使用する必要はありません。

定格電力は1/4Wでも充分です。本機では部品箱に眠っていた酸化金属皮膜抵抗を利用しましたが炭素皮膜抵抗でかまいません。
この抵抗値でパワースイッチのLED(発光ダイオード)の明るさを調整できます。LEDが赤色の場合は2kΩ程度でも十分な明るさが得られます。

定格電力は1/4W以上、抵抗値は5.6kΩに限ります。本機は炭素皮膜抵抗を用いましたが、金属皮膜抵抗でもかまいません。

定格電力は1/4W以上、抵抗値は100kΩから1MΩの範囲内にしてください。本機は炭素皮膜抵抗を用いましたが、金属皮膜抵抗の方がローノイズです。

定格電力は1/4W以上、抵抗値は1kΩに限ります。本機は炭素皮膜抵抗を用いましたが、金属皮膜抵抗でもかまいません。

半固定(トリマー)抵抗器です。本機で使用しているような信頼性の高いポット型を推奨します。抵抗値は2kΩがなければ5kΩでもかまいません。

音量調整ボリュームですからA型を使用します。抵抗値は100kΩがなければ50kΩでもかまいません。ここもやはり信頼性の高いものでないと回した時にガリガリとノイズを発生することがあります。このことは高価なオーディオ用だからといって安心できません。本機はコスモス RV24YN20Sを使用しています。

コスモス RV24YN20Sの場合は抵抗体を覆っている金属カバーが電気的に絶縁されているために、金属カバーをアースに接続する配線をしないと折角の金属カバーがシールドの役割を果たしません。
取りつけネジと金属カバーが電気的につながっているタイプではその配線は必要ありません。

音量調整の必要がなければ1/4W 100kΩの固定抵抗を入力(In put)とアースの間に接続してください。

比較的ポピュラーなローノイズトランジスターです。hFE(直流電流増幅率)の大きさでEとFのランクがありますが、本機ではEランクを使用しました。

ランクを示すEの文字が品物の右側に印刷されているため、それをエミッタの表示と勘違いしかねませんが、リード線を下にして印刷のある平らな方を表面にして見たとき、エミッタのリード線は左側で、真ん中はコレクタ、右側がベースです。

定電流ダイオード(CRD)で、電流値は1mAを中心に0.88mAから1.32mAまでが規格の範囲となっています。耐電圧は100Vです。
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は逆方向で使用しますが、定電流ダイオードは順方向で使用します。極性を逆向きに接続すると大電流が流れて壊れるので、配線するときにはマーク(黒帯)の方向を良く確認してください。

真空管アンプのB電源整流に適したファーストリカバリダイオードです。
他のダイオードでも逆電圧1000V以上、順電流0.5A以上であれば代替え可能です。
逆向きに接続するとB電源にマイナス電圧が発生して電解コンデンサーが破裂する危険があるので、配線するときにはマークの方向を良く確認してください。

小型のシリコンダイオードを使用します。1S1588はスイッチング用のダイオードですが、一般整流用の10D2などでもかまいません。
LEDと逆向きの極性で並列接続して、LEDに定格以上の逆電圧が掛からないように動作します。

LED付の電源スイッチで、パネルの穴に押し込むだけで簡単に取付けできますが、取付ける穴を四角く正確な大きさに開けなければならないので、丸穴を開けるだけでよいスナップスイッチの方がケースを加工する点では簡単です。
何れにしろ3A以上の電流容量で機械的にしっかりした、操作フィーリングのよいものを選んでください。

無くてもかまわないかも知れませんが絶対ということはありませんから、万が一のことを想定して入れておく方が安心できます。配線中にこれを目にすると安全に対する意識が呼び覚まされるので、実質的なだけでなく精神的にも良いお守りとなります。
定格は1Aが適当で、速断とかスローブローなどの特殊タイプである必要はなく、スタンダードなタイプでかまいません。

MT管9ピン用です。接点が変色しているものは半田の流れが悪いし接触不良を起こしかねないので避けた方が無難です。取り付け金具の違いでシャシーの上から取付けるタイプと内側から取付けるタイプがあり、取付け金具の無いプリント基板用もあります。店頭で現物を手にして買う分には間違いないですが、通信販売で買う場合には取付けタイプを確かめないと失敗することがあるので注意してください。
本機はタイト製金メッキで、シャシーの内側から取付けるタイプを使用しました。

1L4Pと呼ばれる形状で、本機では電圧の低い部分に使用するので小型なもので充分です。

RCAジャックでシャシーとは絶縁して取付けます。
本機は外側の接点とその端子とが削り出し一体構造で、金メッキ仕様の少し高級なものを採用しました。
外側の接点とその端子がプレスでカシメて接合してある物は、導通不良が発生しないように接合部分に半田を流して未然の対策をしておきましょう。

ピンからキリまであるので選択に迷うかもしれませんが、スピーカーコードの取付け易さが第一です。
スピーカーコードを取付ける時、とかく力を入れて締めがちになりますから、その時に、取付け部分が緩んでガタガタにならないように、しっかりと固定してください。

半田付け程度の熱では溶けない、耐熱ビニール被覆の撚り線を使用します。
大電流の箇所はないので細い線材でかまいません。線径を表わすAWGという単位では数値が大きいほど細くなります。本機はAWG20で外皮が比較的薄い UL規格品で7色×2m袋入りのものを主に用いましたが、出力トランスの2次側から出力端子までの配線だけはAWG18のOFC(無酸素銅)線を用いています。

本機に使用したものは長さ2m、7A 125Vと表示のあるACプラグ付平行ビニールコードです。

入力ピンジャックから100kΩ VRまでの配線に使用します。本機はオーディオテクニカ AT6133 (元は古河電工AWM 1691 28AWG PCOCC)を使用しました。

タカチUC20-5-14D(W200×H50×D140)を使用しましたが、板厚が2mmあるので加工には少し苦労しました。
ほぼ同じ大きさのリードP-1(W200×H60×D130)ならば板厚が1mmなので加工し易いと思います.
ボリュームを省いて出力トランスに占有床面積の小さいタンゴM-705を使えば、より小型なリードS-8(W180×H50×D120)の使用も可能です。

フロントパネルのデザイン
サイズ196mm×46mm
実物大図面PDF

FP.gif (5764 バイト)


top 最初に電源を入れる前の準備

<注意> 抵抗測定は決して通電中に行わないでください。アンプおよびテスターを壊す危険があります。

top 調整

<注意> 真空管の抜き差しは当然ですが、テスターをつなぐ時と外す時は、電源を切った状態で行う事を励行してください。これは、失敗や事故を未然に防ぐために重要な心がけです。

補足

5W 2kΩの両端の電圧を70Vに設定することで、6BM8 5極部のカソード電流が35mA(70V÷2kΩ=35mA)になります。
設定電圧を60Vにすればカソード電流が30mAとなり、80Vにすればカソード電流が40mAとなります。
35mAは歪みなく最大の出力が得られる電流値であり、35mAより多くても少なくても最大出力が減少します。
良好な特性データーを得るためにはもっと厳密に最適な電流値を追い込んで行きますが、そうしたことはアンプの利用面からは無意味です。
それよりも、30mAと40mAの音の違いを聴いてみる事の方が意義があります。ただ、最大プレート損失7Wの規格を越える使い方では6BM8の特性の劣化が早まる事を覚悟してください。
プレート損失 PP はプレート電流 IP とプレート・カソード間電圧 EP-K を測定し PP = IP EP-K   で求めます。

top 使い方

IN-PUT端子にCDやMDやパソコンなどのオーディオ出力を接続し、OUT-PUT端子にスピーカーを接続して、電源を入れ、ボリュームを上げれば音が出ます。パソコンの電源が切れる時にショックノイズを発生する場合は、アンプの電源を先に切ってください。
パソコンケースの上に直に置くとクーリングファンや各ドライブの機械的振動が伝わって来るので、弾力のある厚いゴムマットなどの緩衝材を敷いてください。
電源電圧の変動が大きいとアンプの動作点が変化し、好ましくありませんから、他の機器と共有するテーブルタップを使用する場合は、テーブルタップのコードが芯線の多い電気抵抗の小さいものにしてください。


top Svetlana 6BM8 を使用した場合

sv6bm8.jpg (13087 バイト) 現在最も 入手し易いと思われるSvetlana 6BM8を使用してみました。

6BM8を交換した場合は必ず VR2を調整して5W 2kΩ両端の電圧を70Vに設定する必要があります。

音質や特性に大差なく、動作上も問題なく使用できます。

現行品で貴重価値のない分、安心して使えます。


top Q&Aのコーナー

本機に関するご質問にお答えいたします。ご質問はEメールでこちらへお送りください。 

Q1 ・・・友人に自慢したところ、1台作ってくれないかと言われましたが、1つ問題が生じました。それは、電源をオフにしてすぐスイッチを入れるとヒューズが飛んでしまいます。普段はそんな乱暴な使い方はしませんが、友人に渡すとなると対策を取らなければなりません。
A1 このアンプは初段にトランジスターを使うことで、ホットスタートでも6BM8には過電流が流れない回路にしたつもりでしたので意外です。
しかし私のアンプではご指摘の現象を再現できませんでした。
OFFしてからONするまでを1秒から1分程度まで時間を変えてテストしてみましたがヒューズは切れません。

取りあえずはヒューズを、瞬時過電流では切れないスローブロータイプにするか、スタンダードタイプなら2Aにすることで対処してください。

−補足−

入力のカップリングコンデンサーの容量を大きくした場合、電源投入時に出力管に過大なプレート電流が流れるようになります。
写真Aと写真Bは出力トランス1次側(直流抵抗182Ω)の電圧降下をデジタルオシロスコープ(縦軸1目盛5V/横軸1目盛2秒)で観測して、電源OFF後12秒で電源ONした時の波形です。
0.1μFから1μFの範囲では写真Aのようになりますが、4.7μFでは写真Bのように2倍近いプレート電流が一時的に流れています。

写真A (Cc=0.22μF) 写真B (Cc=4.7μF)
Ip0.22uF.jpg (13578 バイト) Ip4.7uF.jpg (14416 バイト)

【解説】本機は電源投入時に、入力のカップリングコンデンサーを充電を完了するまでの間は2SC1775Aのコレクタ電流が流れないカットオフ状態となっています。
その状態で6BM8の3極部がヒートアップすると、5極部のコントロールグリッドに高いプラス電圧が掛かります。
しかし一方で5極部カソードとB電源間のコンデンサーを充電する電流によって5極部カソードの電圧が上昇しているために、5極部のカソード-グリッド間はマイナス電圧となっていて5極部のプレート電流は流れません。
5極部カソードとB電源間のコンデンサーが充電されると5極部カソードの電圧が下がり、漸く5極部プレート電流が流れ出します。

このように入力のカップリングコンデンサーを充電する時間よりも、5極部カソードとB電源間のコンデンサーを充電する時間の方が長ければよいのですが、入力のカップリングコンデンサーの容量が大きいと2SC1775Aのカットオフ状態が長く続き、その間に5極部カソードの電圧が下がってしまうために、5極部プレート電流が過大となる事態が発生します。

top戻る

Q2 製作上の問題でしょうか「音がとても歪み、アンプの動作をしません。」
部品を下記のように変更しています。

1.電源トランス

タンゴPH-100を用いています。従って、B電圧が220Vから250Vへ上昇します。

2.出力トランス

タンゴM705を用いています。4Ω端子に8Ωの負荷を接続し、一次10kΩとして使用している。

3.半固定VR

指定品は2kΩですが、手持ちの10kΩを用いています。

お伺いしたいこと

1.各部の電圧

6BM8の各部の電圧はどの位になっているのでしょうか?
B電圧が異なることが原因と推測しますが、回路図中に電圧値が判らないので、試行錯誤しています。
PH-100を用いた場合、プレート電圧が320V程度になります。HPの説明文中「回路の特徴」で、200Vと程度との記述がありましたので、平滑回路中に抵抗を挿入し、電圧を220V程度まで下げましたが、「音が歪む」現象は変化しませんでした。また、その時に用いた抵抗値は、22kΩでした。(この抵抗値は、結構高いな、と思っています)プレート電圧が320Vの時でも、220Vでも、バイアス電圧は、(とりあえず)、指定値の70Vに合わせました。

2.B電圧が高い場合の処置

平滑回路中に抵抗を挿入する以外に、何か良い方法はありませんでしょうか?(セメント抵抗の2kΩを変更することで可能でしょうか?)

3.バイアス電圧(70V)の安定度の件

バイアス電圧として、70Vに調整するように指示されていますが、±2V程度はふらつきます。
この位の安定度は、許容範囲なのでしょうか?

A2 最大出力が小さいので能率の低いスピーカーを大音量で鳴らそうとすると音が歪みます。入力を絞って音量を小さくしても歪むのであればアンプに問題があります。

部品の変更に関しては、どれも音が歪む直接の原因とはなりません。

  1. 6BM8のプレート損失が定格を上回り寿命は短くなりますが、最大出力が増加します。
  2. 問題ありません。
  3. 微妙な調整がしにくくなりますが、精密に調整する必要はないのでOKです。
AC250V.gif (3389 バイト)お伺いに関して
  1. 各部の実測電圧を回路図に記入しましたので参考にしてください。上がLチャンネル、下がRチャンネルの電圧です。この電圧は素子の特性差によってバラツキますので、だいたいこの程度の電圧になるんだという感覚で見てください。
    B電圧の問題ではないと思います。
    AC250Vの場合、B電圧は320V程度となります。
    200Vは6BM85極部のプレート-カソード間の電圧で、+B電圧を220Vまで下げる必要はありませんが、22kΩは異常です。なにかの間違いではないでしょうか。
  2. +B電圧を調整するために抵抗を入れるとしたら、右図のように1kΩ〜1.5kΩで3Wのセメント抵抗を+Bの配線途中に各チャンネル毎入れます。
    プレート電圧にかかわらず70V程度に設定してください。この電圧を高くすると2SC1775Aのコレクタ電圧が高くなるので無信号時でも120V以上にしないように、調整の際も注意が必要です。
  1. AC250Vrk.gif (3740 バイト)6BM8のプレート損失を定格内に納めるためには、B電圧を下げる以外にも、プレート電流を減らすことで対処できます。
    右図のように+B電圧が320Vならば、2kΩセメント抵抗と直列に2W 470〜510Ωの抵抗を入れて、6BM85極部カソード電圧を70〜75Vに設定するとよいでしょう。
  2. 最初の超3結6BM8アンプは自動的にバイアス電圧を調整して、プレート電流をある程度一定にする自己バイアス方式になっていましたが、この回路では2kΩの抵抗がDC電流を制限するために、プレート電流が暴走する心配はないので、固定バイアス方式となっています。
    そのためご指摘のように電源変動などで出力管の電流が多少変動し、調整点の電圧がふらつきます。場合によっては±5V程度ふらつきますが実用上は問題ありません。
  その後、HPに記載された各部の電圧を確認しましたが、B電圧が高い以外に、特筆すべき相違が無い、しかし、音が歪む現象は変化しないので、おかしいと悩んでいました。その時、2kΩ5Wセメント抵抗の発熱が無い事に気付き、まさかと思い抵抗値を確認した処、openでした。セメント抵抗の断線は、今まで未経験でしたので、疑う事もせずに放置していました。
最初の頃の調整時に、電源投入前にVR2の値を最大にしなかった事で、一度、ダイオード、トランジスタ、VR2を焼き切ってしまった 経緯があり、その時、2kΩ5Wも焼いてしまった事が考えられます。再度、部品の確認、布線チェックを行い、調整、音出しまで進みました。
  元々の原因は、電源投入前にVR2の値を最大にしなかった事で、私の説明の不備を痛感し反省しています。そして多大なご苦労をおかけしたことをお詫びいたします。これに懲りず、新たな製作に挑戦されますよう望みます。今度は楽しい製作のご経験や、ご感想のメールをお待ちしています。
また、皆様から頂いたご意見、ご質問を活かして、このHPをより充実させていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。

top戻る

Q3

 

  1. 私にはただ一つ半導体E102に関する質問があります…ダイオーですか、ツェナーですか?私はその記号を知りません!そして 目的は何ですか?
  2. ここイタリアで,私がE102と2SC1775Aを見つけるには一寸問題があります。ヨーロッパの相当品をあなたは知りませんか?
  3. あなたは電気回路図を描くためにどんなソフトウェアを使用してますか?
A3
  1. E102は1mAの定電流ダイオード(CRD)です。詳しくはデーターシートを参照してください。
  2. 残念ですがヨーロッパの相当品は知りません。
    2SC1775Aと互換の最低条件は、VCBO>120V, Hfe>200 です。詳しくは2SC1775Aのデーターシートを参照してください。
    定電流ダイオードE102の代わりにツェナーダイオードを使用する回路を下図に示します。
    6bm8z回路図ZD.gif (19556 バイト)
    他にもこのような回路があります。
  3. 回路図等の作図にはマイクログラフィックス社の Micrografx Graphics Suite を愛用しています。

top戻る

Q4

 

  1. 今回6BM8シングルアンプを手持ちの出力トランス「タンゴU−808」で製作しようと思います。一次,二次インピーダンスはどのように変更すればいいのでしょうか。
  2. 2SC1775Aはどのようにとりつければいいのでしょうか。
  3. 電源トランスは手持ちの品でB電圧が210Vにさがります。そのへんもアドバイスおねがいします。
A4
  1. U−808の一次側は普通に、Pをプレートに、BをB電源につないでください。
    A1シングル増幅動作例
    プレート電圧 170 200 V
    第2グリッド電圧 170 200 V
    第1グリッド電圧 -11.5 -16 V
    無信号プレート電流 41 35 mA
    無信号2グリッド電流 8 7 mA
    負荷抵抗 3.9 5.6
    第1グリッド入力信号 6 6.6 V(rms)
    出力 3.3 3.5 W
    歪み率 10 10 %


    二次側は1をアース側にして、1と2を出力端子につないでください。

  2. 実体接続図の通りです。ラグ板には2SC1775Aのエミッタとベースを半田付けしてあり、コレクタのリード線は空中で配線コードと接続してあります。
    GIFファイルの図が解り難い場合は、PDFファイルをご覧ください。拡大して詳しく見ることができます。
  3. B電圧が210Vでも現在の回路定数で音は出ますが、有効な動作範囲の中心から動作点がズレてしまうために出力が小さくなります。
    プレート電圧が低い場合は右表の動作例のように、プレート電流を増やすように動作点を変更します。
    具体的には、5W 2kΩセメント抵抗を5W 1kΩセメント抵抗に変更して、70Vに調整するところを50Vにしてください。

top戻る

Q5 無帰還とNFBと超3極管接続の音を比較をしたい。
A5 3極部のプレートの接続を、5極部のプレートから+Bへ変更することで無帰還となります。
具体的には、6BM8ソケットの端子Hと端子Eを接続している配線の端子E側を取り外して、端子Fにつなぎ変えるだけです。
こうすると3極部のプレート電圧が、出力トランスによる直流の電圧降下が無くなって高くなりますから、VR2を再調整してください。
また、ゲインが非常に高くなりますから、ボリュームを上げ過ぎないように注意を要します。

NFB方式とするには、無帰還の状態で、出力トランスの2次側から2SC1775Aのエミッタへ20kΩ位の抵抗を接続します。

6bm8zNF.gif (15835 バイト)

top戻る

Q6 このアンプは市販されてますか、またキットはありますか。
A6 私は自分の趣味でアンプを作っているだけで、製造販売はしていません。キットもありません。
このアンプを入手する最良の手段は、ご自身でパーツを集めて製作することです。
パーツは秋葉原まで買い出しに行かなくても、「MJ無線と実験」や「トランジスター技術」等の雑誌に載っている広告を調べて、通信販売によって購入できます。
若松通商、テクニカルサンヨー、サトー電気、ノグチトランス販売 などは、アマチュア相手に、少量の注文にも応じてくれる有り難いお店です。

top戻る

Q7 超3極管接続Ver.1はダーリントン回路と違いますか。
A7
ダーリントン接続

超3極管接続Ver.1

 

ダーリントン回路の信号電圧に対する接続は左上の図のようになります。一方、超3極管接続Ver.1は左下の図のようになってます。

ダーリントン接続の入力信号電圧ei は、V1のグリッド-カソード間電圧egT とV2のグリッド-カソード間電圧egP に配分されます。
egP はV2のプレート電流によって変化するために、V2のプレート電流の変化でegTが変化し、V1のプレート-カソード間電圧が変化して、その影響は出力抵抗の増大となって現れます。
しかし、V2のgmが高くegPの変化が無視できるほど小さければ、超3極管接続Ver.1と同様な動作状態となります。これは、V2にトランジスターやMOS-FETを使用することで実現できます。

超3極管接続Ver.1の帰還率は100%ですが、ダーリントン接続の帰還率は、V1の電圧増幅率をμとすると1/μです。
従って超3極管接続Ver.1の等価的なプレート抵抗は1/gmと非常に低くなりますが、ダーリントン接続の等価的なプレート抵抗はμ/gmです。
ダーリントン接続で、仮にV1がμ=10で、V2がgm=10mSでも、等価的なプレート抵抗は1kΩと、並みの3極管と比較しても高い数値ですから、オーバーオール等のNFBを併用することが必要です。

ダーリントン接続では入力信号電圧を対アース間に与えることができるため、前段の電圧増幅回路と接続がやり易いことは利点です。
また、ダーリントン接続のV1はカソードフォロワとして動作するので、V2にグリッド電流が生じても強力にドライブでき、そのグリッド電流が出力電流に加わることによるパワーアップも見逃せないポイントです。

top 戻る

Q8 20年近く前に電気工作少年だったころ、真空管アンプをつくって、その後押入に眠っていたのですが、最近まともな音を聞いていないことに気づき真空管アンプでも製作しようかとWebを探したところ、トランスがマッチしたのと超3極管接続という響きにひかれ製作してみました。
トランスは昔作ったアンプがタンゴのPH-120とU-608だったので、B電源が250VにかわるだけでQ&Aもあったので助かりました。
Q&Aには2つの方法があったのですが、リップル除去とクロストーク対策に抵抗でドロップするほうが良いかと判断しました。
平滑コンデンザは大阪日本橋のデジットに330μFの出物があったので買ったのですがちょっと大きくて突入怖かったのですが大丈夫でした。

調整で1つ問題がありました、PH-120はヒータが3巻あって全部容量が異なるため、ヒータ電圧がばらつくのも良くないかもと考え同じ巻から取ったですが、調整後(2kΩの半固定の抵抗値がRLでかなり違うのでおかしいと思った)片chのカソード電流が倍ぐらいあることがB電源を計って判明しました。
ヒーターの片側とカソードを繋いでいるのでそうなることが分かり、違う巻から取って解決しました。

ちなみにスピーカーが6Ωなのですが、どのように影響するのでしょうか?
聞いている限りは問題なさそうですが。
A8 電源トランスのヒーター捲線をLchとRchで共通にしても構いませんが、LchとRchのカソードをつなぎ合わせてはいけません。
ヒーター捲線の片側をLchかRchのどちらか一方の出力管のカソードに接続すればよいです。

スピーカーが6Ωの場合、最大出力が増すはずです。と云うのは、現在の5kΩ対4Ωで8Ωのスピーカーを使う設定は、最大出力を犠牲にしてダンピングファクター優先しているためで、6Ωのスピーカーにするとダンピングファクターは下がりますが最大出力は増加します。
スピーカーが6Ωの場合、7kΩ対4Ωにすれば、ダンピングファクターを上げることが出来ます。
しかしダンピングファクターだけが高ければいいとも云えないので、難しいところです。
その辺は自作のアンプですから、ご自身で音を聴いて適当な設定を見つけるのがベストではないでしょうか。
色々やって見てください。

top 戻る

Q9 ヘッドフォンアンプとして使う場合の部品などの注意点について、何かありましたらお願いいたします。
A9 ヘッドフォンアンプとして使うとしても、何も特別なことをする必要はありませんが、ヘッドフォンは感度が高いのでアンプのノイズが多いと耳に付きますから、部品配置や配線の仕方が悪くてハムを引くことがないようにしてください。

ノイズの程度がスピーカーでは気にならないがヘッドフォンでは耐えられない場合は、アンプの出力を直接ヘッドフォンにつながず、抵抗で作ったアッテネーターで出力を減衰してヘッドフォンに入れてやります。

アッテネーターの例

R1+R2をスピーカーのインピーダンスに合せて8Ωにします。
減衰量はR1/(R1+R2)で、値が小さいほどノイズが減りますが、その分ボリュームを上げなければならないので、出力が飽和することによる歪みが発生します。

アッテネーターにはアンプの出力が加わるので、2W以上の抵抗を使用します。

R1(Ω) R2(Ω) R2/(R1+R2)
6.8 1.2 0.15
6.2 1.8 0.23
5.6 2.4 0.30
4.7 3.3 0.41
3.3 4.7 0.59
2.4 5.6 0.70
1.8 6.2 0.78
1.2 6.8 0.85

ヘッドフォンのインピーダンスは30Ω〜300Ω位とスピーカーのインピーダンスよりも高いので、アンプ出力に直接ヘッドフォンをつなぐと、負荷インピーダンスが高くなることでアンプの動作特性が変化し、最大出力が減り、出力波形のマイナス側が先にクリップするようになりますが、超3極管接続アンプでは負荷インピーダンスが高いほど出力管の歪みが減りますから、スピーカーの場合より質の高い音が得られます。ヘッドフォンは数十mWの出力でかなりの大音量が得られるので、アンプの最大出力が減っても問題ありません。
アッテネーターを使う場合は、残留ノイズと信号の比率を拡大するのが目的ですから、アッテネーターの入力インピーダンスをスピーカーと等しくすることで、できるだけ大きな出力をアンプに発生させるようにします。

top 戻る

Q
10
「超3極管接続Ver.1 6BM8 シングル ステレオパワーアンプの改造実験」における"改造 2 初段をカスコード化"の回路を製作したいと考えており、エレキットのTU-870を改造しようと考えています。その際、
  1. B電源が170VAC(120mA)の整流で240VDCになると理解しておりますが、電圧の差は終段FETおよび初段2SC1775Aで吸収できると考えてよいのでしょうか?
  2. ヒータの電源が共通になるのですが、1方の出力段と接続する必要があるのでしょうか?
  3. 出力段のFETおよび初段のTrの基準電圧をツェナーにて12Vにされているのはどういう意味があるのでしょうか?
  4. また,ここの基準電圧用の電流を47kΩにて約6mAにされているように思うのですが5Wを3Wとすることは可能でしょうか?(計算では2W)
A
10
  1. B電圧は低くてもそれなりに動作させることができます。出力管のカソード電圧は少なくても40Vは必要です。
  2. ヒーターはカソードスリーブからはみ出してる部分からハムの原因になる電子が放出されるため、ヒーターに対してプラス電位の部分にはヒーターからの電子が飛びつきます。第1グリッドは感度が高いので、ここにヒーターからの電子が飛び付くとハムが出ます。これを防ぐためにヒーター電圧を第1グリッド電圧に対してプラス電位しておく必要があり、そのためにヒーター電源を出力管のカソードに接続しています。
    TU-870の電源トランスは6.3V捲き線が1つしかないので、LchかRchのどちらか一方の出力管のカソードに接続すればよいです。またアースに落としてもハムが出ないならそれでも構いません。
  3. 基準電圧をツェナーにて12Vしている理由は、初段FETのドレイン電圧を入力信号電圧の2倍以上確保したいので、入力信号電圧の最大値を3Vとすると初段FETのドレイン電圧は6V以上となります。初段FETのドレイン電圧を高くすると、その分出力管のカソード電圧を高くしなければならないので、B電圧に余裕がない場合は無駄に高くする必要はありませんから、6Vのツェナーを使用しても構いません。その際、出力段定電流回路のソース抵抗220Ωは調整して40mAになるようにしてください。
  4. 抵抗は定格ぎりぎりの電力で使うと高温になり周辺部品に悪影響を与えますから、消費電力の2倍以上の定格のものを使用します。6mAも流さなくてもツェナーは動作するので、47kΩは100kΩ 1Wにしても構いません。

top 戻る


top より高い完成度を目指して

 ここをクリックすると超3極管接続Ver.1 6BM8 シングル ステレオパワーアンプ U改 のページへジャンプします。


Copyright © 1997 Shinichi Kamijo. All rights reserved.
最終更新日: 14/12/08 19:55:32 +0900


Evolve Power Amplifiers * Links