第167回 関東三土会 (2015年04月18日)

総括


今月はいつものアンプ、スピーカの他に、Raspberry Pi用のDAC、Raspberry Pi用のMPDファイルを一部改造してMRCKを出力してしまうようにした小型デジタルプレーヤ、逆に昔懐かしいアナログレコード再生の装置の出品があって、手作りアンプの会らしい幅の広い内容でした。

出品作品

鈴木 さん
◆6DE7 SEPPアンプ
昔、OTLアンプ用の回路に出力トランスを付たアンプを作ったとのことですが、そのアンプの真空管が残っていたので、現代版を作ってみたとのことです。元がOTL回路なのでNFB量が多く、ゲインが不足気味でした。また、出力トランスも小型で素性は不明とのことです。しかし再生してみると素直な音が出ていて、小音量で使用するのに適している感じでした。
出品者のコメント:
 元々このアンプは『無線と実験』1964年4月号に掲載されていたもので、ハイμの12AX7を使ったプリアンプとセットになっていたものでした。したがって、メインアンプに相当するこのアンプだけではゲインが足りませんでした。家では、プリアンプ(『無線と実験』に投稿し1994年3月号の208ページに掲載されたもの)をつけて聴いています。このプリアンプももっていくべきでした。
 真ん中の写真の左下に斜めに取り付けられているのが、ジャンクの「出力トランス」とおぼしきもので、素性はわかりません。ただ、直流を流していないので案外素直な音がするのかもしれません。
 有意義なコメントをいただき有難うございました。
粕谷 さん
◆3A5トリプルプッシュ・プルアンプ
パラプッシュの音が良かったので、トリプルにして作っみたとのことです。グリッド電流が流れる領域まで使って1Wの出力を得ていました。落ち着いた音で人の声がいい感じで聞こえていたと思います。
音源は、フリスクMP3に出力トランスを付たものを使用していました。
出品者のコメント:
すみません、パラプッシュプルって言ってましたか。正しくはパラシングルで出力が350mWです。それをトリプルプッシュプルにしたら3倍の1W出るかなと考えて製作しました。落ち着いた音というのはトランス式フリスクMP3プレーヤーの音だと思います。CDプレーヤーで試聴したほうがわかりやすかったでしょうね。
動作中に3A5を触っても40℃くらいなので大丈夫です。また、消費電力も22Wと少ないミニアンプです。
詳しくは拙ブログに書きましたので、もしよろしければご覧ください。

田村 さん
◆PARKコアキシャルPP2
箱はメーカ推奨の大きさのものを使用していました。コーン紙がホーンとして作用するため、2kHz付近に少しピークが出るので、通常の使用では補正用のPST回路を入れるようにしたとのことです。
まず、ウーハだけをフルレンジで鳴らしてみると素直な音です。人の声が自然で伸びがありました。
次に、ウーハーにPST回路入れると、音の膨らみと空気感は減りますが、バランスがよくなりました。
更にツイータを追加すると、細かい表現が出るようになり、全体にバランスの良い聴きやすい音になりました。同軸の良さが出ている感じです。女性ボーカルも音像が安定していて自然に綺麗に聞こえていました。
この状態でPST回路を外すと、バランスは若干崩れるものの、声が前にでくる感じになりました。
出品者のコメント:
今回、本格的なコアキシャルを手に入れたのでネットワークも相当力を入れて作り込む予定でしたが、まんまとネットワーク地獄に嵌り泥沼状態でした。気分転換のウーファー1本フルレンジ鳴らしがあまりにいい音で、やっぱりこのUNITは本格的だと感心しました。と共にこの高域まで綺麗なポリプロピレン・ウーファーの実力をフルに使ってやろうという基本スタンスに方向性を少々修正し、ウーファーはPST回路で中音域を抑えてワイドレンジぽく、コアキシャルのツィーターはアドオンの-18dBハイパスにしてみました。会場では
①ウーファーのフルレンジ1本
②ウーファーにPST回路追加の1本
③PST回路にアドオン-18dBツィーター
④希望が有り、ウーファーフルレンジ+アドオン-18dBツィーター
と、色々な組み合わせで聴いてもらいました。
アドバイスに③のセットより④のPST回路無しの方がいい意見もあり、会場や好みのせいかもと、帰宅して再確認したら、やっぱり低音の量感がダブつき気味でした。
少々手直ししてみて、最後に現在制作中の新しい箱に入れたらまた、持ち込みたいと思います。
石田① さん
◆無指向対向2wayスピーカ
ウーファはDCU-131A、スコーカはDCU-F081PPで、CR1段のCRフィルターで200Hzでクロスするマルチアンプで駆動していました。スコーカは電流アンプです。スコーカは横向きにして視聴位置でフラットになり、かつ無指向性になっています。その効果が出ているのか、少しホール感のある音になっています。
聴く位置によっては、高音のピークが強調されることがあるようですが、全体としてバランスの良い音でした。
出品者のコメント:
 PARC鑑賞会用のスピーカがとりあえず形になったのでお披露目しました。まだバランス調整中なので若干ドンシャリですが、無指向性の特徴ある音場が出ていると思います。

 形状も含めもう少し全体にブラッシュアップしていきたいと思います。
見元 さん
◆WAVEプレーヤ
ツール工房の製品ですが、手軽に使えるWAVプレーヤの中ではいい製品ということです。古いICなので、ノイズレベルが若干高くSDメモリは2GBまでしか使えないという問題はありますが、クッキリした聴きやすい音でした。
出品者のコメント:
これまで10台近いWAVプレイヤーを製作・検討してきましたが、これが1番良いという印象を持っています。ちなみに、この基板は2007年に製作され、使用ICも古いものです。さらに、この基板はデコーダーICメーカー(VLSI社)の評価ボードと同等回路だそうで、細かいところまでしっかり検討されていて、使い勝手も良いと思います。
大塚 さん
◆RaspBMC wavプレーヤ
前回の課題であったディスプレイのアスペクト比の問題は、ディスプレイの立ち上げ時間を3秒遅らせるように遅延回路を入れることで解決していました。また、音が途切れる問題は、Raspberry Pi 2 Bで対処する予定だったのですが、ソフトが動かないことが判明し、諦めたとのことです。このため、CPUの負荷が大きいスクリーンセーバーなどの重要度の低いソフトを停止し、対処したとのことです。
会場で音楽を再生してみましたが、ちゃんと再生できていました。女性ボーカルも雰囲気良く再生できていました。
出品者のコメント:

皆様のアドバイスのおかげで、何とか使えるような代物になりました。

ありがとうございました。


基板の固定はMDF板にスペーサーをかまして木ネジどめなので、遅延回路を組んだラグ板の増設時には、レイアウト変更は簡単に行えました。

板固定方式はこういうときに便利です。


石田② さん
◆waveletによるスピーカ測定
OmniMicのver4.7からウェーブレット測定ができるようになったようです。視覚的にスピーカの位置のずれ、位相のズレなどを表示できるので、スピーカの位置調整するときに便利に使えるということを紹介していただきました。
出品者のコメント:
 マルチスピーカのユニット間の位置あわせをするのにインパルスを使うのは中々テクニックがいるのですが、このWaveletだと比較的直感的に解りやすいと思います。

 またクロスオーバ部分の位相周りなどによる音圧分布などが見やすい点など、従来の周波数特性とは違った方向からの見方もでき、うまく活用できれば面白いですね。

 チャネル間のフィルターを入れると結果的にユニット間の物理距離とは違った合わせ方になるという考えを裏付けるデータにもなりました。
堀尾 さん
◆Raspberry PiのMPDソフト改造について
VolumioなどのMPDソフトは、Paspberry PiからI2S信号を出せるようになっていますが、さらにMRCKを出すように改造したり、I2Sではなく右詰め出力にするように改造しています。
その仕組を、細かいところを省略して分かりやすく説明して頂きました。
右詰め出力を出して、上野さんの24bit R-2R DACを駆動し、音出しをしましたが、素直な音で試聴会でも使えるレベルの音だと思いました。
今後、他のソフトも改造する可能性があるとのことなので、期待しましょう。
出品者のコメント:
Linux Kernelを弄ると、これはいろいろ遊べます。
BCM2708 というペリフェラル群のドライバーを弄って実現しています

ただ、ソフトを三土会に出品すると、具体的に見せるものがなくて困りますね

岩野さん・堀尾さん・(蝦名) さん
◆Raspberry Pi 2 B用DAC基板の紹介と、MRCK切り替えによる音の比較

岩野さんが製作した基板を組み立てました。最初の2枚の写真が5VのACアダプタを2個使うようにした基板(蝦名組立)、3枚目の写真がトランスを使った電源で組み立てたもの(岩野さん組立)です。
今回は、最初の作例のDAC基板を使って、MRCKの違いによる音を聴き比べてみました。この基板はDACにES9023を使い、Raspberry Piの電源とDACの電源を別にできるようになっています。さらに、Raspberry PiとDACはデジタル・アイソレータで相互の干渉を抑えているなど、オーディオマニア仕様(手作りアンプの会仕様?)になっているものです。MRCKも三種類選べるようになっています。
(1)ICS570の逓倍回路をPICで制御し、BCKからMRCKを作るもの
(2)49.152MHzの水晶をMRCKにするもの
(3)堀尾さんがソフトで出力するようにしたMRCKを使うもの
水晶と堀尾さんのソフトMRCKはあまり差がない感じです。ICS570を使った逓倍出力をMRCKにしたものは、少し音が荒れる感じがありました。
今回は、MPDにVolumioを使用しましたが、Runeaudioに換えれば、落ち着いた高音質の音が出ます。この基板はお勧めです。
出品者のコメント:

安江 さん
◆コンサイスコンポ
昔、セットで15万円くらいしたものでだそうです。ケースは、ネジを外に出さないようしてデザインにこだわった製品とのことです。このようなデザインにした経緯を聴かせて頂きました。
レコードを再生してみると、山口百恵の声が綺麗に聞こえていました。最近のデジタル機器から出てくる音と遜色ないばかりでなく、デジタル機器の再生音とは違う雰囲気のある音で、いい感じで聞こえていました。


スナップショット